数次相続とは?放置によって複雑化した相続は迷わず専門家に相談しましょう!
日本の社会問題として少しずつ表面化している、放置された相続。法的な義務がないため、どうしても放置されてしまいがちな不動産の相続ですが、放置したまま相続人が亡くなってしまうと数次相続となり、次の相続人がとても困ることになります。
もし親族で未登記にしている不動産がある場合や、面倒だからしばらく登記をしなくていいと考えている方は、必ず専門家に相談をしてできる限り早く相続登記を済ませるようにしましょう。
今回の記事では相続登記を放置したり、遺産分割協議中に相続人が亡くなってしまうことによって起きる「数次相続」について、問題になりやすい3つのパターンと併せてご説明していきます。
子供の将来の負担を減らすためにも、相続の放置だけは絶対にやめましょう!
もし未登記の不動産を相続することになった場合や、相続してから登記せずに時間がたってしまっている場合は、迷わずにご相談に来てください。
数次相続とは?
数次相続とは、一次相続について登記が完了していない状態で、一次相続の相続人が亡くなることで二次相続が発生した状態のことをいいます。
もし二次相続の登記が完了しない間に二次相続の相続人が亡くなってしまうと、三次相続・四次相続と続いていく可能性があります。
また、数次相続については民法などで明確に定義されているわけではなく、一般的な相続の分類として定義されているものですので、読む記事によって多少の認識の違いなどがあるかもしれません。
一般的な数次相続の定義としては、下記の2点を満たすものとなります。
- 被相続人Aが死亡して、相続人Bが相続を承認した
- 相続人Bが遺産分割協議中、もしくは登記完了前に亡くなり、被相続人となった
相続人Bが相続を承認・放棄をしていない場合は、再転相続となります。
代襲相続と数次相続は何が違う?
代襲相続と数次相続との違いは、「被相続人と相続人のどちらが先になくなっているか」という点にあります。
相続人が先になくなった | 代襲相続 |
---|---|
被相続人が先になくなった | 数次相続 |
また、代襲相続では二次相続での相続人は「子供だけ」となりますが、数次相続においては全ての相続人が二次相続の相続人として認められます。そのため、数次相続か代襲相続かの違いはとても重要な基準となります。
代襲相続については「代襲相続とは?人生100年時代に必要な相続知識」をご参考にしてください。
再転相続と数次相続は何が違う?
数次相続と似たものに「再転相続」というものがあります。再転相続と数次相続の違いは、「一次相続の段階で相続人が相続を承認しているかどうか」という点にあります。
相続を承認(放棄)していない | 再転相続 |
---|---|
相続を承認している | 数次相続 |
一次相続の相続人が承認・放棄についてはっきりと意思表示をしている場合は特に問題なく「数次相続」とすることができます。
しかし、相続放棄が可能である「相続を知ってから3ヶ月以内」に、相続についてはっきりとした意思表示がないままなくなってしまった場合、数次相続ではなく再転相続となる可能性があるので注意が必要です。
再転相続では一次相続の承認・放棄を選択することができる
数次相続と再転相続では、一次相続に対する相続放棄に違いが出ます。
数次相続では一次相続について、すでに「承認」したことになっていますので、数次相続人が一次相続について放棄することはできません。
一方で再転相続の場合、一次相続の「承認」「放棄」が未確定のままですので、承認するか放棄するかの判断も、数次相続人が引き継ぐことになります。
相次相続(二次相続)と数次相続は何が違う?
相次相続と二次相続の違いは「一次相続の手続きが完了しているかどうか」という点にあります。
一次相続の登記が完了している | 相次相続 |
---|---|
完了していない | 数次相続 |
また税法上での相次相続は、一次相続で課税がされていて、一次相続と二次相続の期間が10年以内の相続を指します。
相次相続と数次相続では税法上の違いがありますので、どちらの相続として認識されるかによって適用できる節税の制度が異なります。
相次相続については「二次相続とは?対策次第で子供の負担が大きく変わる!」をご参考にしてください。
二次相続について
「二次相続」は相次相続のことを指す言葉として使用されることがありますが、一次相続・二次相続・三次相続というように相続の順番を指すためにも使用されます。今回の記事の中では、(相次相続)とついていない場合は、相続の順番を表す意味での二次相続とします。
不動産では放置された相続が数次相続に発展することが多い
一般的な数次相続は、一次相続と二次相続の間が短く、遺産分割協議中に相続人が亡くなることで発生します。しかし、不動産の相続問題では、相続登記を放置することによって数次相続に発展してしまうことが多くあります。
「不動産の相続はいつまでに何をする?相続手続きの期限をチェック!」でもご説明していますが、不動産の相続手続きには明確な期限がありません。固定資産税さえ支払いをしてれば、相続登記をしなくても土地や家をそのまま利用することができてしまいます。
そのため、相続登記をしないまま過ごす方が多く、一次相続が発生してから30年以上たった後に発生した二次相続が数次相続となるケースが多々あります。
数次相続は素人では対応できない問題が山積みになることも・・・
数次相続は未登記のままの相続と、直近で発生している相続の両方の手続きが必要になるため、専門知識がないまま行うと途中で断念せざるを得ない状況になることもあります。
また、一次・二次だけではなく、その前から未登記のまま放置されている相続があったり、場合によっては代襲相続なども絡むなど、複雑化するパターンも珍しくありません。
遺産分割協議がうまくまとまらず、遺産分割調停にまで発展するケースも年々増えています。
数次相続でよくあるパターンをいくつかご紹介します。
①相続が長年放置されていて、数次相続に発展するパターン
日本の相続に関する社会問題ともなっているのが、放置された相続です。
不動産などの物件でも段々と問題が表面化していますが、所有者が不在(すでに亡くなっている)の物件は、全国各地にたくさんあります。場合によっては30年以上相続登記がされていない物件もあります。
こういった物件では、登記がされていないだけで法律上は相続人の共有財産となっています。固定資産税さえ払っていれば、そのまま相続人などが土地などを使用することができるため、本人も忘れている(もしくは気づいていない)場合もあります。
長年放置されてしまった相続では次のような問題が生じやすくなります。
- 被相続人の除票が取れない(除票の保存期間は5年間)
- 相続人のほとんどが代襲相続となっていて、相続人と連絡が取れない
- 預金債券などが時効となっている
それぞれの問題について少し詳しく見ていきましょう。
被相続人の除票が取れない
亡くなった方の除票(住民票)は、5年間という保存期間が設けられているため、5年以上放置してしまった相続登記の場合は被相続人の除票を取ることができません。
このような場合、不動産などの所有者と被相続人が同じ人であることを証明するのが難しくなるため、「権利書」や「不在証明書」などの書類を補充的に提出して証明する必要があります。
ただし、実際にどのような書類や手続きが必要になるのかは、素人では判断ができないため、専門家に依頼するようにしましょう。
令和元年6月20日から保存期間が5年から150年間に変更されました。そのため、令和6年20日の時点で保存されていた除票については取得できる場合があります。
代襲相続などが重なり相続人と連絡が取れない
相続において特に対応が難しいのが「相続人と連絡が取れない」ということです。
数十年も放置された相続の場合、その間に相続人が亡くなられていたり、疎遠になってしまって連絡を取ることが難し場合があります。
しかし、相続登記をするためには「相続人全員で遺産分割協議」を行う必要がありますので、相続人の一人でもかけている状態では相続登記を行うことはできません。
長年放置された相続では、孫やひ孫が数次相続人となっていることもあり、相続人全員の意思を確認するのがとても難しくなります。
預金債券などが時効になっている
被相続人が銀行にお金を預けていた場合(預金債券)、その預金債券の時効は最大で10年間となります。
もし預金債券の時効をすぎている場合は、被相続人が預けていたお金を引き出すことができなくなります。(法律的に銀行側が支払いをする義務がなくなる)
ただし、実際にはきちんとした手続きをすることで、支払いに応じてくれる銀行が多いようです。もし放置してしまった預金債券がある場合には、弁護士や司法書士に相談をして、きちんとした手続きを行うようにしましょう
②一次相続人と相続人の関係性に大きな差が出るパターン
数次相続や代襲相続などでは、相続人同士の力関係がはっきりと出てしまい、正当な相続分などを主張出来ない(しにくい)例もあります。
例えば次の図を見てください。
上図の例の場合、黄色の背景の「相続人A」「相続人D」「相続人E」の三人が一次相続の相続人となります。相続人Aから見ると、相続人Dは「甥っ子の配偶者」ですので、関係性が遠くなる可能性があります。
また、本来の相続では相続人Dは一次相続の相続人にはならない(直系卑属ではない)ため、遺産分割協議の中で発言力が小さくなってしまう事もあります。
本来であれば法定相続分などを主張する権利がありますが、相続人同士の年齢がかけ離れてしまっていたり、被相続人との関係性に差が出てしまうと、相続人同士だけでは正しい遺産分割協議を行うことが難しくなる場合があります。
③本来相続人にならない人が相続人に含まれるパターン
数次相続では、本来相続人ではなかった人が相続人になることがあります。代表的な例としては「相続人の配偶者が一次相続の相続人となる」「被相続人の配偶者の連れ子が相続人になる」の2パターンです。(下図参照)
このように本来相続人とはならない人が相続人になる場合があり、専門的な知識がないまま遺産分割協議を行うと、相続人が欠けたまま遺産分割協議書を作成してしまう場合があります。
また、弁護士や司法書士などの第三者を交えない場合、話し合いが長引いてより難しいパターンに発展する場合がありますので、注意が必要です。
数次相続は必ず専門家に相談しましょう!
このように数次相続ではややこしい問題に発展してしまうことが多々あります。上記のようなパターンに少しでも当てはまる場合はすぐに専門家に相談しに行きましょう!
また、遺産分割協議に時間がかかればかかるほど、次の数次相続が発生する可能性も高くなりますので、できる限り早く解決することが大切です。
数次相続に限らず、相続の手続きは基本的に専門家に相談することをお勧めいたしますが、特に数次相続などの複雑な相続では、必ず専門家に相談をするようにしてください。
アイビスホームでも相続診断士を取得している社長の窪多が、相続全般についてアドバイスをすることが可能です。不動産を含めた相続問題がある場合は、お気軽にご相談にいらしてください。
数次相続の相続登記はどうすればいい?
数次相続が発生した場合、まずは必ず専門家に相談しましょう。一言に数次相続といっても、それぞれの置かれている状況によって、相続手続きの難易度も異なります。
専門家に相談をしたうえで、それでもご自身で手続きをされたい方や、まずは手続きの方法などについて知っておきたい方は、この後の内容をご参考にしてください。
数次相続の相続登記に必要な書類
数次相続で必要になる書類は、基本的には通常の相続と同じものになります。ただし、通常の相続よりも相続人が多くなるケースがほとんどですので、数次相続の方が書類集めにかかる時間や手間が多くなります。
一般的な相続に必要な書類については「相続登記の必要書類を効率よく集めるためには?一覧表から取得方法までご説明」をご参考にしてください。
数次相続の相続登記の方法
数次相続では原則として、発生した相続手続きを個別に手続きをする必要があります。もし一次・二次が起きた場合には、一次と二次で別々の手続きを行い、三次相続まである場合は合計3回の手続きが必要になるということです。
ただし、特例として中間の相続登記で相続人がひとりになる場合は、中間の手続きを省略することができます。(中間省略登記)
本来であれば個別の手続きが費用になるため、それぞれの手続きで登録免許税が必要になります。中間省略登記であれば手続きの回数を減らすことができるため、登録免許税の節約にもなるので利用できる場合は利用するようにしましょう。
中間省略登記を行うことができるのは、一次相続(三次相続まである場合は二次相続も含む)で次の条件に当てはまる場合です。
- 相続人が元々一人しかいない
- 他の相続人が相続放棄を行い、残った相続人が一人の場合
- 遺産分割協議によって、実際に相続を行う人が一人になった場合
数次相続の相続分について
数次相続の相続人となった場合、相続分がどのようになるかが気になるところですよね。
数次相続では、元の相続人(数次相続の被相続人)が本来もらうべき相続分を、数次相続人で割ることになります。
この時、数次相続人同士の相続分は通常の相続と同じような割合で決まります。
例えば、一次相続では3人の子供が相続人となり、そのうちの一人がなくなり、二次相続が発生したとします。二次相続では配偶者と2人の子供が相続人となると、次の図のような相続配分となります。
勘違いしてしまいやすいのですが、上図ではあくまでも一次相続の相続分についての割合を示しています。そのため、二次相続の被相続人が元々持っている財産については、別の相続として手続きを行います。(配偶者1/2、子供1/4ずつ)
今回の図の場合、被相続人Aの財産が6,000万円、相続人Bの財産が3,000万円だとすると、法定相続分通りに相続を行うと次のような金額が相続されます。
相続人 | 一次相続の金額 (割合) | 二次相続の金額 (割合) |
---|---|---|
相続人B | 2,000万円(1/3) | |
相続人C | 2,000万円(1/3) | |
相続人D(二次相続人) | 1,000万円(1/6) | 1,500万円(1/2) |
相続人E(二次相続人) | 500万円(1/12) | 750万円(1/4) |
相続人F(二次相続人) | 500万円(1/12) | 750万円(1/4) |
数次相続の相続放棄について
数次相続でも通常の相続と同様に、被相続人のマイナスの財産も相続をする必要があります。そのため、もしマイナスの財産が多い場合などは、きちんと相続放棄をしておく必要があります。
相続放棄の方法は通常の相続と同じで、相続が発生したことを知った日から3ヶ月以内に財産調査などを行い、家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行います。
ただし、数次相続の場合は直接的な被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内の申告が必要となります。
不動産の相続は放置せずになるべく早い登記をしましょう
数次相続による相続トラブルは、相続登記を速やかに行うことが一番の対策方法となります。すでに発生してしまった数次相続についても、時間がたつにつれて次の数次相続を生んでしまう原因ともなります。
相続手続きは難しいこともたくさんあるため、一度は自分で手続きをしようとして、諦めたまま放置してしまうことも少なくありません。
もし自分で手続きを開始した場合でも、途中で難しいと感じたらすぐに専門家に相談するようにしましょう。
弁護士事務所、司法書士事務所、税理士事務所・・・。どこに相談していいかわからなければまずはアイビスホームにお越しください。相続診断士の窪多がお話を聞かせていただき、必要があれば信頼のできる先生方をご紹介いたします。
お気軽に『窪多』まで