相続には色々な落とし穴があり、二次相続の相続税もその中の一つです。

特に二次相続の場合は、二次相続が発生する前に対策を行う事が大切になりますので、日頃から親子・兄弟姉妹など、家族で相続について話をする機会を持っておく事が一番の対策になります。

今回の記事では「二次相続」について、どんな対策ができるのか、不動産の観点からもご説明いたします。将来的に相続するべき不動産をお持ちのお客様は、お気軽にご相談に来てください。

子供や孫に負担をかけないためにも、夫婦・家族で相続の話をしておくことは大切ですね。

その通りです。なかなか切り出しにくい話ですが、夫婦間だけでも話をしておくことで、いざというときに二次相続も考慮した対策などがしやすくなります。

二次相続の対策は専門知識がないととても難しいので、必ず専門家に相談してください。

※今回の記事では相続税についてご説明している内容もありますが、資格を持たない人が税務相談を行うことは、税理士法によって禁止されています。

アイビスホームでは税務相談に直接お答えすることはできませんが、必要な場合には信頼できる税理士の先生をご紹介させていただきます。

二次相続とは

二次相続とは、相続完了後に相続人が亡くなることで、立て続けに発生した相続のことを言います。

例えば、「父・母・子供」の3人家族で、父が亡くなった1年後に母が亡くなったとします。この時父から「母と子供」に行われる相続を「一次相続」といい、1年後の母から「子供」に行われる相続を「二次相続」と言います。

同じように、「親から子」「子から孫」という場合の相続も二次相続に含まれる事がありますが、一般的には、「父もしくは母から配偶者」「配偶者から子ども」への相続を二次相続と呼びます。

今回の記事でも配偶者を含める相続を二次相続としてご説明していきます。

数次相続との違いは?

二次相続と似ているもので、「数次相続」という相続があります。

数次相続と二次相続との一番の違いは、一次相続の相続手続きが完了しているかどうかが重要となります。 手続きが完了した後に次の相続が発生した場合を「二次相続」、手続き完了前に発生した場合は「数次相続」となります。

代襲相続との違いは?

代襲相続は、相続権を失っている相続人の代わりに、その子供が相続を行う事です。

二次相続との違いは「①被相続人が亡くなる前に相続人が亡くなっているか」「②配偶者が相続人にかどうか」というのがポイントです。 ①②どちらも満たす場合は二次相続ではなく代襲相続となり、それ以外の場合は二次相続もしくは数次相続となります。

二次相続は特に相続税に関して注意が必要

二次相続は一次相続と比べて、法定相続人の数が少なくなることで相続税の控除額が減少します。

また相続人に配偶者がいる場合に利用できる「配偶者の税額軽減」などが利用できなくなるため、特に相続税に関して注意が必要になります。

相続税に関しては次のポイントを特に注意しておきましょう。

  • 相続税の基礎控除額
  • 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠
  • 配偶者の税額軽減
  • 小規模宅地等の特例

二次相続の対策は一次相続の分配がとても重要

二次相続における税金対策と聞くと、いざその時になったら対応すればいいと思いがちですが、実は一次相続をどのようにするかで二次相続の相続税に大きく関わってきます。

もっと言えば、相続税の対策は相続が始まる前から対策を行っておく事が大切ですので、一次相続が起こる前に税理士等の専門家に相談をしておきましょう。

よくあるその場しのぎのパターンとして、一次相続時に配偶者の税額権限制度を最大限に利用するパターンがありますが、相続する状況によって、二次相続で多くの相続税が必要になる事があります。

配偶者への相続分の注意点

もし税理士などの専門家に相談せずに、自分たちだけで相続手続きをされようとしている場合、夫婦間の共有財産について特に注意をしてください。

夫の給料の一部を妻名義の口座に貯金をしていた場合など、離婚の裁判では「共有財産」として認められることもありますが、相続税等においては夫が稼いだお金としてみなされる場合があります。

そのため、夫婦間での共有としている貯金など、どこまでが夫からの相続になるのかは素人では判断が難しくなります。共有の口座を持っている方などは特に注意しましょう。

なぜ一次相続の分配でここまで相続税が変わるのか

一次相続と二次相続の一番の違いは、相続人に配偶者がいるかどうかというところにあります。相続人の数が減るのはもちろんのこと、配偶者だけに認められる相続税の控除なども利用できなくなります。

そのため、二次相続は一次相続の時と比べて税金面で不利になる事が多くあります。相続するものが多い場合は早めに税理士などに相談をして、二次相続に対する対策をとるようにしましょう。

ポイント① 一次相続よりも相続税の基礎控除が低下する

「父・母・子供」の3人家族の場合、一次相続の時は「配偶者と子供」の2人の相続人がいますが、二次相続では「子供」だけになり、相続人が一人減ることになります。

相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」ですので、一次相続の時は4,200万円あった控除額が、二次相続では3,600万円に減少します。

ポイント② 配偶者の税額軽減が利用できない

二次相続時は、配偶者から子供だけの相続になるため、配偶者のために用意されている「配偶者の税額軽減」を利用する事ができます。この配偶者の税額軽減は、被相続人の配偶者に相続を行う場合に適用される制度です。

具体的には、配偶者への相続分について、「配偶者への法定相続分の半額」もしくは「1億6,000万円」のどちらか高い方まで相続税が無税になります。

例えば合計2億円分の相続があった場合、配偶者への相続は1億6,000万円まで無税。合計10億円の相続であれば、配偶者への相続は5億円まで無税になるということです。

このように一次相続の場合は、配偶者に多く相続させた方が相続税が安くなるため、その場限りの対策として配偶者に多く相続させる場合があります。しかし、二次相続で子供が相続するときに、子供の負担がとても大きくなりますので、注意が必要です。

ポイント③ 小規模宅地等の特例が利用できない場合が多い

土地や建物を相続する場合、被相続人と同居している親族であれば「小規模宅地等の特例」を利用することで、相続税を大幅に減らす事ができる場合があります。

一次相続の場合であれば、多くは配偶者と同居していますので、問題なく小規模宅地等の特例を利用する事ができます。

ただし、二次相続の場合は子供とは別々に暮らしている場合が多く、小規模宅地等の特例が適用できない事があります。特に子供が結婚などをしていて、すでに持ち家に住んでいる場合は適用されるのが困難になりますので注意が必要です。

小規模宅地等の特例では330㎡までの部分において、相続税の評価額を最大80%軽減できるという、相続税対策においてはとても大きな制度ですので、できるだけ利用できる環境を作るようにしましょう。

不動産を相続する場合の二次相続の対策方法とは

一次相続の段階で被相続人が不動産を所有している場合、小規模宅地等の特例など、不動産関係の制度を正しく利用する事で相続税を少なくする事ができます。

最近では配偶者居住権という制度もでき、相続の分配方法についても少しずつ多様化しているため、より専門的な知識が必要になる場面も多くなっています。

ここでは不動産を相続する時の3つの対策方法をご紹介します。

※相続する不動産の価値や状況、合計相続額などによっても異なりますので、必ず専門家に相談をしてから対策をするようにしてください。

対策① 一次相続の時点で子供が不動産を相続する

もし両親と子供が同居している状況で一次相続が発生した場合、不動産を子供が相続することで相続税が少なくなる可能性があります。

配偶者には「配偶者の税額軽減」が認められているため、不動産でも現金であっても一定額の相続には相続税が課税されません。

一方子供の相続にはこのような軽減措置はありませんが、相続する不動産が小規模宅地等の特例が適用されるものであれば、子供が相続した場合でも最大で80%の評価額の減額をする事ができます。

小規模宅地等の特例については一定の要件を満たす場合にしか適用されません。

同居していない子供が不動産を相続する場合などについては、配偶者がそのまま住み続けられるように「配偶者居住権」を設定して相続する方法もあります。

配偶者居住権は配偶者の生活を守ための制度ですが、無闇に設定してしまうと売却や賃貸利用が難しくなる場合もあります。相続する不動産が売却や賃貸利用に向いているのかどうか、一度相続に強い不動産会社などに相談をしてみてください。

近く取り壊し予定のある建物などは配偶者が相続した方がいい?

古い建物などで、更地にする予定がある物件などについては、配偶者が相続することで相続税を節約するという方法もあります。

土地については消滅することはありませんので、できるだけ子供が相続するとしても、建物についてはその時の価値や今後の利用方法などを考え、専門家と一緒に誰が相続するのかを考えるようにしましょう。

対策② 相続する不動産を賃貸併用住宅にする(建替え・リフォームなど)

相続する事が予想される不動産がすでに古くなっている場合など、建替えやリフォームの検討をする際に「賃貸併用住宅」にするという方法です。

自宅として使用している不動産に比べ、賃貸として利用している不動産の方が固定資産税や相続税を抑える事ができます。賃貸併用住宅の場合、賃貸部分と自宅部分で異なる制度が適用できる場合もあるため、より効果的な節税対策になる場合があります。

ただし、賃貸業を行うことになりますので、賃貸に関しての専門的な知識などが必要になります。メリットだけではない対策になりますので、しっかりとご相談をしてリスクを把握した上で対策をするようにしてください。

対策③ 現金から不動産に帰ることで評価額を抑える

この方法は、少し別の角度からの対策方法となります。

現金での相続の場合、所持している金額がそのまま課税対象の金額になりますが、不動産を購入して相続する場合は、購入した金額よりも評価額が下がるため相続税の対策になる場合があります。

税金対策のためだけに現金を不動産に替えるのはあまりお勧めはできませんが、投資物件として購入するのは一つの手です。 物件を購入する際は、正しい目利きが絶対条件になります。富山での不動産の目利きには30年の経験と、自信がありますので是非ご来店・ご相談ください。

二次相続を考えた一般的な相続税等の対策方法とは

二次相続の相続税対策については色々な方法があり、相続の状況や家族構成などによっても異なるため、全ての方に当てはまるとは限りません。

ここで紹介する対策方法については、あくまでも一例としてご参考にしていただければ幸いでございます。

また、税務相談については税理士の独占業務の範囲となりますので、有償・無償にかかわらずお受けする事ができません。もしアイビスホームにきていただいたお客様で、税金に関するお悩みがある場合は、顧問税理士など、アイビスホームが信頼をしている先生をご紹介させていただきます。

①生前贈与による対策方法

二次相続に限らず、相続税対策の一つとして主となる方法に「生前贈与」があります。

相続は被相続人が亡くなった後の遺産を、相続人で分けることを言いますが、生前贈与は被相続人が生きている間に相続人等に財産を贈与します。 生前贈与は相続と異なり、贈与額に応じて贈与税が課税されます。

ただし、贈与税は一人当たり年間110万円までの基礎控除が認められているため、数年に分けて贈与をすることで相続として残す遺産を減らすという対策方法をとる場合があり、これを暦年贈与と言います。注意点としては次のとおりです。

  • 相続開始前3年以内の生前贈与は相続税の算定基礎に含まれる
  • 毎年決まった額を贈与する場合、定期贈与としてみなされる

定期贈与としてみなされた贈与の場合、例え年間110万円以下の贈与だったとしても、全額を一括で贈与したものとして贈与税が課税されます。

また、贈与を行ったということを証明するための贈与契約の締結なども必要になりますので、必ず税理士などの専門家の先生にご相談をするようにしてください。

生前贈与は一次相続よりも前に行う方がいい

相続開始前の3年以内に行われた生前贈与は相続税の課税対象となります。

そのため、生前贈与による相続税対策は、できるだけ長い期間対策ができる状況の方が有利になります。 一次相続と二次相続の間に10年以上の時間がある場合はある程度の対策になりますが、立て続けに相続が起こることも珍しくありませんので、早めに対策をするようにしましょう。

また、一次相続の時は親がまとめ役になりますが、二次相続では兄弟姉妹間で揉めてしまうことも少なくありません。生前贈与を通して親子・兄弟姉妹で相続について話し合っておくことも大切です。

飛び越し贈与による対策

子供に生前贈与を行った場合、相続発生時から3年以内の生前贈与は相続税の課税対象となりますが、孫への生前贈与であれば相続税の対象となりません。

そのため、生前贈与した分は全て非課税とする事ができる場合もあります。

生前贈与以外の贈与の特例

生前贈与以外に、子や孫などの直系卑属に対する贈与はさまざまな特例が認められる場合があります。

例えば住宅取得援助であれば令和3年12月31日までに住宅資金として贈与を受けることで、省エネ住宅であれば最大1,200万円の非課税となります。

このような贈与に関する非課税制度は、適用される期間や要件が厳しく定められていることがほとんどです。国税庁のHPなどでも確認する事ができますが、内容が難しい場合もありますので専門家に相談してみることをお勧めいたします。

②配偶者の資産を増やさないようにする

二次相続では配偶者から子供への相続が行われるため、配偶者の遺産を少なくしておくことで二次相続で必要となる相続税を減らす事ができます。

例えば一次相続の時に、今後価値が上がりそうな「物件」「土地」「株券」などの遺産については、配偶者ではなく子供が相続する事で、将来的な配偶者の遺産が増えないようにする事ができます。

③相次相続控除を利用する

相次相続控除とは、一次相続から二次相続までの期間が10年以内の場合に適用される制度で、二次相続で支払う相続税を減額する事ができます。

計算方法については今回の記事では省略しますが、一次相続から二次相続までの期間が短いほど減額幅が大きくなります。もし一次相続で相続した配偶者が、相続税を支払っていた場合は申告するようにしましょう。

相次相続控除が適用されるのは、次の条件に全て当てはまる場合です。

  • 被相続人の巣族人であること(相続放棄をした人や、相続k年を失った人は対象外)
  • 一次相続と二次相続が10年以内に発生していること
  • 一次相続の際に相続税が課税されたこと

④生命保険に加入する

死亡保険等で受け取るお金については「みなし相続税」として相続税の課税対象となるため、生命保険等への加入は直接的な相続税対策にはなりません。

ただし、死亡保険には相続税の基礎控除とは別に、「法定相続人の数 × 500万円」という非課税枠を利用する事ができるため、遺産として受け取るよりも保険金として受け取る方が支払う税金を少なくする事ができます。

また、保険金は被相続人の口座のように、遺産分割協議が完了するまで凍結されるということもなく、なおかつ「現金」で入ってくるため、納税資金としても活用する事ができます。

相続人が多く遺産分割協議が長引く事が想定される場合は、特に納税資金で困る場合があるため、納税資金に対する対策も重要になります。

※生命保険の受取人を配偶者にしておくと、二次相続で相続する遺産が増えてしまう可能性もありますので、受取人を子供にしておくなどの対策が必要になる場合もあります。

独学の対策では先のことまで考えきれない

一次相続の時だけであれば、配偶者の税額軽減などを利用して、独学でも相続税対策を行う事ができる場合もあります。

ですが、一時的に対策がうまくいったように思えても、二次相続で思わぬ落とし穴が・・・。なんて事にもなりかねません。

税金に限らず、相続問題はその時だけでの問題ではなく、次の世代にも影響する大切な手続きばかりです。必ずしも独学での対策が悪いわけではありませんが、自分の子供や孫といった次の世代を大切にするためにも、一度は専門家に相談するようにしましょう。