不動産を購入する時、多くの人が銀行からお金を借りローンを組んで購入します。

住み替えの時も同様にローンを組みますが、不動産の住み替え時には売却先行か購入先行かによって、融資の種類が異なることも。 売却先行であれば通常の不動産を購入する時と同じような低金利の住宅ローンを組むことができますが、購入先行の場合はつなぎ融資も検討します。

今回の記事では、そんな不動産売却時のつなぎ融資についてご説明しながら、本当につなぎが必要なのかどうか考えていきましょう。

売却するのになぜつなぎ融資が必要なのか

つなぎ融資は通常の住宅ローンと違い、住み替えを行うすべての人に必要なものではなく、一定の条件下にある人にだけ必要となる融資です。どんな人・場合に必要になるか見ていきましょう。

つなぎ融資が必要になる場合

つなぎ融資が必要になるのは、 売却予定の不動産が売却完了する前に、大きなお金が必要になる場合です。 具体的には次のような例が挙げられます。

• 売却前に住み替え先の不動産を購入したい場合（購入先行）
• 売却活動のためにまとまったお金が必要になる場合（リフォーム・たて壊しなど）

他にもいくつかパターンはありますが、ほとんどの場合は購入先行で住み替えを行う場合の購入資金として、つなぎ融資を必要とします。

つなぎ融資ができる条件

つなぎ融資には各銀行それぞれ条件がありますが、主に必要となる条件は次のようなものが挙げられます。

• 売却予定の不動産が売却できるものであること
• 売却予定の不動産に抵当権をつけること
• 資金用途が明確であること

つなぎ融資と言うのは、不動産の売却が完了した時点で一括で返済する事を前提とした融資です。そのため、売却予定の不動産が何らかの理由により「売りにくい（売れない）不動産」である場合、担保にすることができず融資を受けられない可能性があります。

つなぎ融資を受けるために必要な書類・流れ

つなぎ融資を受けるための流れは、通常の住宅ローンを組む時と基本的には変わりません。審査に必要な書類を集め銀行に審査をお願いし、審査が通れば融資を受けるといった流れになります。

審査に必要になる主な書類は次のものです。

• 不動産の登記事項証明書
• 公図・地積測量図・建物図面
• 不動産売買関係書類
• 住民票の写し
• 運転免許証、パスポート等
• 源泉徴収票
• 確定申告書類

通常の住宅ローンの際も同じですが、融資の審査にはポイントがあります。審査が通るかご不安なお客様も一度お気軽にご相談ください

つなぎ融資を受ければ売却に時間をかけることができる（メリット）

住み替えの際、つなぎ融資がなくても住み替えはできますが、つなぎ融資を受けることで得られるメリットもあります。

つなぎ融資を受けるのほとんどの場合は「購入先行」で住み替えをすすめるためですので、メリットも購入先行と同じようなものになります。

「売却と購入どっちが先？マイホームの住み替えは事前計画をしっかりと」

購入先行で住み替え先にこだわることができる

つなぎ融資を受けることで、今の家に住んだまま新しい住み替え先をゆっくり時間をかけて探すことができます。仕事の都合での住み替えではなく、今の環境よりもより良い環境に住み変える場合にはとても大きなメリットとなります。

また、今すぐ購入したい不動産が見つかってしまった場合など、売却完了まで待てない場合にもつなぎ融資を受けることで気に入った不動産を逃すことなく購入することができます。

納得のいく金額で売却することができる

つなぎ融資がない場合、売却よりも先に住み替え先の不動産が見つかると、購入資金を用意するために売却を急ぐ必要が出てきます。その際、売れ筋の不動産ですぐに納得のいく金額で売却できればいいのですが、基本的に急いで売却する場合は売却価格が下がることがほとんどです。

これは買い手を早く探すのに価格を下げた方が名乗りでてくれる買主様が多いことや、値段交渉をされたときに売り急いでいることから交渉に応じざるを得ない事が理由に挙げられます。

一方、つなぎ融資を受けて不動産を購入している場合、購入資金を用意するために無理に売り急ぐ必要がないため、納得のいく金額で売却しやすくなります。

時間をかけるほど高く売れるということでなく、時間に制限がない方がその不動産の適正価格で販売できる可能性が高くなります。

残高がある場合ローンを１本化できる（月々の返済額を少なくする）

収入や貯蓄の状況などによって、つなぎ融資がなくても購入先行で進められることもありますが、売却予定の不動産のローンが残っている場合同時に二つのローン返済を行うことになるため、月々の返済が多くなります。

住宅ローンでは5~10万円程度の返済になることが多いので、2つのローンを同時に返済となると20万円近くの返済になることも・・・。売却には平均半年ほどかかりますので、半年間月々20万円の返済と考えるとかなり生活が制限されるかもしれません。

引っ越しが１回で住む

こちらも購入先行の住み替えのメリットですが、先に住み替え先を用意することで仮住まいも必要なく、引っ越しも１回で済ませることができます。

見落としがちですが、住み替えの時に意外に費用がかかるのがこの引っ越しや仮住まいの費用です。

荷物の量や移動郷里によっても異なりますが、4人家族であればおおよそ10万円前後の引越し費用がかかり、仮住まいの家賃や敷金・礼金などの費用も含めると、半年の仮住まい生活で100万円以上の費用がかかることも珍しくありません。

つなぎ融資は通常の住宅ローンよりも金利が高いので要注意（デメリット）

つなぎ融資が必要かどうかを判断するためには、メリット以上にデメリットを注意してみておく必要があります。どれだけメリットが魅力的であっても、経済的にデメリットに耐えることが不安な場合は無理して融資を受けることは控えましょう。

金利が高めに設定されている

通常の住宅ローンの金利は、2021年9月現在変動金利でおおよそ0.5%程度から設定されている銀行がほとんどです。一方つなぎ融資の場合は3%程度からの設定になっています。

つなぎ融資の場合は一時的な借入のため、総額の金利の額にするとそこまで大きくないように感じますが、不動産が売却できるまでは金利を支払うことになりますので、無視はできない金額となります。

例）　1,5000万円を年率3%で半年間借りるとおおよそ17,8万円の金利

融資期間が決まっている

つなぎ融資で注意しなくてはいけないのは金利だけではなく、借り入れができる期間も重要です。

住み替えのためのつなぎ融資では最長半年間に期限が設定されている場合もあり、設定されている期間によっては売却を急ぐ必要が出てきます。

せっかくつなぎ融資を受けても売却を急ぐことになっては元も子もありませんので、融資の期限などもしっかりと確認しておきましょう。

印紙税や手数料などもかかる

住宅ローンの時と同様に、つなぎ融資を受ける際も手数料や印紙税などの諸費用がかかります。手数料は各銀行によって違いはありますが、おおよそ10万円前後になることが多く、印紙税は借入金額によって変わります。

つなぎ融資で5,000万円以上借り入れることはほとんどありませんので、手数料10万円、印紙税2万円程度と考えておきましょう。

1,500万円を年率3%で半年間借りた場合
金利（18万円） + 手数料（10万円） + 印紙税（2万円） = 合計1,530万円

つなぎ融資のメリットを受けられる条件は限られている

メリットの項目でも触れましたが、つなぎ融資を受けることによるメリットは主に「購入先行」で住み替えができる点にあります。そのため、購入先行を必要としない住み替えではつなぎ融資のメリットを感じられない場合もあります。

比較的つなぎ融資のメリットの方が大きくなりやすいパターンを見ていきましょう。

どうしても購入先行で住み替えたい場合

住み替えの理想は購入と売却を同時に決済することですが、基本は売却を優先します。（詳しくは「売却と購入どっちが先？マイホームの住み替えは事前計画をしっかりと」をご覧ください。）

ただし、より良い環境への住み替えのために購入する不動産をしっかりと選びたい場合や、仮住まいの費用などをかけたくない場合などは購入先行で進めることになります。

特に住み替え先の不動産をゆっくり選びたい場合は、つなぎ融資をうまく活用しましょう。

売れやすい不動産であること

つなぎ融資は金利や諸費用などコスト面での負担はもちろんのこと、融資期間にも制限がありますので、担保とする不動産が売れやすい不動産であることがとても大切になります。

売却までの時間が短いほど、コスト面の削減にもなりますし、期限内での返済（不動産の売却）もしやすくなります。

ただし、とても売れやすい人気物件の場合は、つなぎ融資を受けずに売却先行で進めた方がお得になる場合もありますので、バランスを考えて選択するようにしましょう。

どれくらいの期間で売却できるかは、日々不動産の売買に携わっている専門家でも判断が難しい場合があります。ご自身で判断するのではなく、必ず専門家に相談して住み替えのスケジュールを立てていきましょう。

住み替えの基本は売却先行で検討しましょう

購入先行での住み替えや、つなぎ融資を受けての住み替えはメリットもありますが、コスト面でのリスクが大きくなりがちです。

できるだけリスクの少なくなる売却先行で進めながら、希望の不動産を見つける方法がないかなど、不動産屋さんにしっかりと相談しながらスケジュールを立てていくことが、住み替え成功の一番の近道です。

住み替えの理由によっては十分な期間を設けることが難しい場合もありますが、どんな難しい条件でもお客様の利益を一番にアドバイスをさせていただきます。

急な住み替えから長期的な住み替えまで、ぜひお気軽にご相談ください(^^)