夢のマイホームは一生に一度の買い物。

そんな常識もなくなりつつある現在ですが、今年令和3年(2021年)12月31日までの買換えには譲渡益の課税を将来に繰り延べることができる特例があります。

今回はこの課税を繰り延べることができる特例(特定の居住用財産の買換えの特例)について、国税庁に記載されている内容をわかりやすく噛み砕いてご紹介していきます。

わかりやすく説明するために、内容を一部省いているところもございます。正しい情報や特例の利用については、必ず専門家に相談するようにしてください。

特定の居住用財産の買換えの特例とは

「特定の居住用財産の買換えの特例」とは、簡単に言えば「住むための家を買い換えるときに、条件を満たせば税金の支払いを先延ばしにすることができるよ」という特例です。(以降「買換え特例」とします。)

条件については後ほどご紹介しますが、大まかにきちんと居住用として所有・利用されてきた国内の不動産が当てはまります。(2021年12月31日までの買替えを対象)

ここで重要になるのは、あくまでも「税金支払いの先延ばし」となるため、非課税と違い将来的には支払いが必要になるということです。

先延ばしの期限は「買換えた不動産を売却するまで」となっていますので、自分の世代の間は先延ばしにできるかもしれませんが、相続時などのトラブルに発展する可能性もあります。特例を利用するときは目先のメリットだけではなく、特例の利用によるデメリットなどについてもしっかりと目を向けるようにしましょう。

今回の記事内容は、国税庁のHPに記載されている「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」をわかりやすく噛み砕いて説明しています。より詳しく知りたい方は国税庁のHPをご覧ください。

どんな不動産の買換えなら買替え特例が適用されるの?

特例を利用するかどうか検討するためには、まず自分の買換えが特例利用の条件を満たしているかどうかを確認することからですね。

こちらの条件についても国税庁のHPで詳しく書かれていますが、難しい単語などが多く読む前に疲れてしまう人も多いと思いますので、わかりやすい言葉に変換して説明させていただきます。

自分が住んでいる住宅、もしくは住宅と土地(借地権)を売る場合

買換え特例は居住用の不動産の買換えを対象としている特例のため、買換えを行う本人が住んでいた不動産を売却し、住むための不動産を購入するときに適用されます。

したがって、いま住んでいる不動産の一部を売却して、賃貸用の不動産を購入する場合などには適用されません。

また、過去に住んでいた不動産や、住宅部分を取り壊した場合などについては次の全ての条件を満たす必要があります。

  • 取り壊した年の1月1日時点で、取り壊した住宅及びその敷地の所有期間が10年を超えていること
  • 売却する敷地(土地)の譲渡契約が取り壊した日から1年以内、かつ、売却する本人が住まなくなってから3年後の12月31日までに売却すること
  • 取り壊してから売却するまでに、貸駐車場などとして利用していないこと

売却した年の2年以内に3,000万円の特別控除の特例などを受けていないこと

実は、不動産を売却した時に利用できる税金に関する特例は今回ご紹介している買換え特例に限らず、さまざまな特例が用意されています。

その中でも、直近2年以内に次の特例を受けている場合は買換えの特例を受けることができません。

  • マイホームを売却したときの3,000万円の特別控除の特例
  • マイホームを売却したときの軽減税率の特例
  • マイホームを売却したときの損失に関する損益通算及び繰越控除の特例

また、買換え特例は他の特例と併用することができないため、国が土地などを買い取る「収用」による特別控除と併用することができません。

売却する不動産、購入する不動産がどちらも日本国内にあること

買換え特例は過去も未来も国内で生活する方を対象としている特例になるため、売却する不動産、購入する不動産のどちらも日本国内にあることが条件となります。

国外の不動産からの買換え、もしくは国外への買換えは対象外となりますので注意が必要です。

売却する不動産の売却金額が1億円以内であること

一般の居住用の不動産では、1億円以上の値段で売却されることはあまりありませんが、土地開発等の影響により価格が高騰する場合もあります。

また、相続した不動産などの場合、土地面積が広く総額で1億円以上になることもあります。

相続した不動産などでは一度に全ての土地を売るのではなく、何回かに分けて土地を売却することも少なくありません。(宅地として切り売りする場合など)

上記のように複数回に分けて売却する場合、1回の売却金額が1億円以内であっても、売却した年の前々年から翌々年の5年間の売却金額の合計が1億円を超える場合は対象外となります。そのため、一度特例を適用した場合でも、後から修正申告書の提出と納税が必要になる場合があります。

売却する不動産を10年以上所有し、かつ10年以上居住していること

買換え特例は居住用の不動産の買換えであることが条件となり、居住用として使用していたのかどうかの判断基準が10年を超えて所有し、10年以上居住していることとなります。

購入する不動産の床面積が50㎡以上、土地面積が500㎡以下のものであること

床面積50㎡以上、土地面積500㎡以下と言われても、パッとイメージがつかないと思いますので、ここでは簡単にサイズ感をご説明していきます。

床面積50㎡はおおよそ15坪で、間取りにすると2LDKもしくは3DK程度の間取りが多くなります。一人暮らしもしくは二人で暮らすのにちょうどいいサイズの住宅が大体50㎡になるので、3LDK以上のマンションか通常サイズの戸建て住宅であれば大体は条件を満たします。

土地面積500㎡はおおよそ150坪の土地です。分譲地は大体が50坪前後ですので、基本的な住宅ではこの条件から漏れることはありません。相続した不動産など、古くからある土地の場合は注意が必要です。

売却した年の前後一年以内(合計3年以内)に次の不動産を購入すること

買換え特例は「買換え」が前提となりますので、売却だけではなく新しく居住用の住宅を購入する必要があります。買換え(住替え)では、売却先行か購入先行かなど売却と購入のタイミングがズレることがほとんどです。

買換え特例を受けるためには、売却した日が含まれる年の前後1年以内に新しい家を購入することが条件です。

例:)
2020年10月に売却した場合、2019年1月から2021年12月までに購入

また、購入するだけではなく購入した住宅に住む必要があります。引越し(住替え)の期限は次の通りです。

  • 購入したタイミングが売却の前年もしくは同じ年の場合は、翌年の12月31日まで
  • 購入したタイミングが売却の翌年の場合は、購入した翌年の12月31日まで

購入する不動産が一定の耐震(耐火)基準を満たすこと

一定の基準は少し判断が難しいのですが、購入(取得)した日が築年数25年以内であれば条件を満たします。25年以上経過している住宅の場合は耐火建築物あるかどうかで基準が変わります。

耐火建築物の場合

25年以上経過している中古物件の場合は、新耐震基準を満たせば条件クリアとなります。

耐火建築物ではない場合

25年以上経過している木造住宅等の耐火建築物ではない住宅の場合、買換え時に売却した年の年末までに耐震基準に適合することが証明できれば条件を満たします。

税務署長に買換え期限の延長申請が承認されれば、証明までの期限を伸ばすことができます。

売却する不動産の購入者が親子や夫婦など特別の関係がある人では無いこと

買換えの際に売却する住宅を購入する人が、親族や特殊な関係にある法人の場合は買換え特例を受けることができません。

不動産を買換えた!どんな手続きをすればいいの?

2021年12月31日までに不動産の買換えをした場合で、ここまでの条件に当てはまっていれば手続きをすることで特例を受けることができます。

確定申告を行う

特例を受けるために必要な手続きは、基本的には確定申告を行うだけです。

購入する不動産によっては、耐震性能の証明などの手続きや、期限延長の申請などが必要になりますので注意が必要です。

買換え特例の条件を満たすことが証明できる書類が必要

確定申告を行う際、きちんと条件を満たしいてる買換えかどうかを証明する必要があります。そのためには次の書類が必要になります。

(1)譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

(2)売った資産が次のいずれかの資産に該当する事実を記載した書類

 イ 自分が住んでいる家屋のうち国内にあるもの(家屋の存在する場所に居住していた期間が10年以上であるものに限られます。)

 ロ 上記イの家屋で自分が以前に住んでいたもの(住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるものに限ります。)

 ハ 上記イ又はロの家屋及びその家屋の敷地や借地権

 ニ 上記イの家屋が災害により滅失した場合において、その家屋を引き続き所有していたとしたならば、その年の1月1日において所有期間が10年を超えるその家屋の敷地や借地権(災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売ったものに限ります。)

(3)売った資産の登記事項証明書等で所有期間が10年を超えるものであることを明らかにするもの

(4)買い換えた資産の登記事項証明書や売買契約書の写しで、取得したこと及び買い換えた資産の面積を明らかにするもの

(5)売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの

(6)買い換えた資産が中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであることを明らかにする書類、又は耐震基準適合証明書など

なお、次の場合には、さらに書類が必要となります。

 イ 売った資産に係る売買契約を締結した日の前日において住民票に記載されていた住所と売った資産の所在地とが異なる場合や売った日の前10年以内において住民票に記載されていた住所を異動したことがある場合その他これらに類する場合には、戸籍の附票の写し等で、売った資産が上記(2)のイからニのいずれかに該当することを明らかにするもの

 ロ 確定申告書の提出の日までに買い替えた資産に住んでいない場合には、その旨及び住まいとして使用を開始する予定年月日その他の事項を記載したもの

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm

書類集めや確定申告はできるだけ専門家に相談しましょう

個人事業主の方などで、普段から確定申告に慣れている人であれば、申告自体は自分でできるかもしれません。

ですが、買換え特例をはじめとるする不動産の特例を受ける場合には、自分が対象になるかどうか、また、どんな書類が必要になるのかなどの判断が難しくなります。

特例に適用されないものを確定申告で申告してしまうと、後から修正のための申告が必要になったり、場合によっては追徴なども必要になることがあります。

不動産屋さんや税理士の先生など、まずは特例を受ける必要があるのかというところから相談するようにしましょう。

まとめ

今回は不動産の買換え特例について、できるだけわかりやすく噛み砕いてご紹介してきました。買換え特例のポイントをまとめるとこんな感じです。

  • 2021年12月31日までの買替えで特例を受けることができる
  • 特例を受けるには様々な条件がある
  • 特例は非課税ではなく課税の繰り伸ばし(最終的には課税される)
  • 必要な書類を集めるのが個人では難しい

買換え特例に限らず、不動産や税金の手続きは専門的な知識がとても必要になります。

アイビスホームではマイホームの買換えはもちろんのこと、売却・購入それぞれのご相談も随時受け付けております。特に買換えについては、不動産屋さんとのスケジュールの調整や打ち合わせがとても重要になりますので、数社に相談して話しやすい信頼のできる担当者を探してみてください。