認知症になると銀行口座はどうなる?家族でも引き出せないって本当?
少子高齢化の進む日本では約3617万人が65歳以上で、そのうち約16%が認知症と言われています。
また、少子高齢化はこれからも進み2025年には約470万人の方が日常生活自立度Ⅱ以上の認知症になると考えられています。
日常生活自立度Ⅱ以上・・・日常生活に支障を来すような症状や意思疎通で困難な部分は多少見られるが、周りのサポートがあれば自立した生活ができる
認知症による財産管理の制限については様々ありますが、今回はその中でも「銀行口座」について触れていきます。
銀行口座のお金は、生活費だけではなく医療や介護に使用するための資金にもなる大切な財産です。不動産の管理と合わせて、しっかりと認知症対策をしておきましょう。
認知症になった人の口座からはお金を引き出せない!?
ご家族やご親戚に認知症になったことがある方であればわかると思いますが、認知症を発症してしまうと、口座を凍結されてしまうため、本人はもちろんのことご家族であっても預金をおろすことができなくなります。
口座凍結により起こる障害
認知症の方の口座が凍結された場合、主に次の様な障害(負担)がご家族にかかることになります。
- 病院・介護費用の立て替え
- 生活費の立て替え
- 施設入居費用の立て替え
口座を凍結されてしまっているので当たり前と言えば当たり前なのですが、認知症の方ご本人では自分の生活を支えるだけの資金が足りなくなってしまい、ご家族やご親戚の方が負担をする必要が出てきます。
なぜ口座は凍結されるのか
認知症と老化による物忘れ(ボケ)はしばしば一緒に考えられてしまうことがありますが、実は全くの別物です。
老化による物忘れ(ボケ) | 認知症 | |
---|---|---|
忘れる範囲 | ある物事の一部を忘れる | ある物事の全てを忘れる |
思い出す力 | きっかけがあれば思い出す | きっかけがあっても思い出せない |
判断力 | 低下しない | 低下する |
自覚症状 | あり | なし |
日常生活への支障 | なし | あり |
症状の進行 | ほとんどない | あり |
表をみて貰えばわかる通り、認知症の場合は日常生活に支障をきたすことがほとんどで、一度忘れてしまうと思い出すことはありません。
そのため、本人が自分でお金を引き出したとしても、本人はその事実を忘れてしまい思い出すこともないため、盗難の被害にあったと勘違いしてしまったり、詐欺被害に遭っても気づかない可能性があります。
このようなことから財産を守るために、銀行側では口座の凍結措置を取ることになっています。
立て替えたお金は相続で戻ってくる?
認知症になった方が被相続人になった時、相続する財産(現金や土地)が残っていれば相続人で分割協議を行い、相続を行います。
相続人が複数人いても、被相続人の生前の生活費や医療費・介護費用などを一人が負担するということもあります。
この様なケースでは、分割協議の際「寄与分」として協議の題材にすることはできますが、必ずしも認められるとは限りません・・・。
そのため、生活費や介護費用などはできるだけ本人の財産で賄える環境を作っておくことが大切です。また、万が一負担することになった場合は一人で負担するのではなく、相続人みんなで負担をすることで相続時の建て替え分の清算がスムーズになることがあります。
認知症で凍結された口座のお金を使うには?
認知症による口座凍結の対策方法は「認知症になる前」と「認知症になった後」で異なります。
認知症になる前の対策方法
認知症になる前であれば対策方法にもある程度の選択肢があります。
- 任意後見制度を利用する
- 家族信託契約をする(専用の口座を開設する)
- 銀行の代理人サービスを利用する
任意後見制度の利用
後見制度には「任意」と「法定」の二つがあり、認知症が発症する前であれば任意を利用することができます。
任意と法定の違いはさまざまありますが、一番の違いは後見人を選ぶことができるという点です。
法定の場合は家庭裁判所が選任した人が後見人になり、約7割が家族以外(弁護士等)が選任されるため、後見報酬などがかかるなど不都合が生じることもあります。
そのため、後見制度を利用することを検討しているのであれば、認知症になる前の「任意後見制度」についても検討する様にしましょう。
家族信託契約をする
家族信託(民間信託)については「家族信託で財産管理の何が変わる?メリット・デメリットを深掘りしてご紹介」の記事でメリット・デメリットを深掘りしていますので、ご参考にしてください。
家族信託は不動産管理などに使われることの多い制度ですが、銀行口座の管理についてもあらかじめ信託契約を結んでおくことで、認知症が発症した後でもご家族が引き出すことができる様になります。
ただし、家族信託を行うためには受託者(管理する人)が自分の財産と受託した財産を分けて管理する必要があります。
そのため、信託専用の口座の開設が必要になる場合があります。また、銀行によっては専用口座の開設に最低預金額が設定されていることもありますので、あらかじめ銀行に確認をする様にしましょう。
銀行の代理人サービスを利用する
まだ対応している銀行が少ないのが現状ですが、メガバンクなどでは認知症対策として「予約型代理人サービス」などの提供も始まっています。(2021年3月22日スタート)
少子高齢化に伴い、認知症患者が増えている日本では、昨年から銀行口座の凍結問題についてさまざまな動きがあります。その中の動きの一つがこの予約型代理人サービスです。
認知症になる前に、あらかじめ銀行に代理人となる人を登録しておくことで、万が一認知症になったときに代理人が口座の管理ができる様になる仕組みです。
家族信託では契約が面倒。法律が難しくてわからない。などといった方はこういったサービスを利用してみるのもいいかもしれません。
認知症になった後の対策方法
口座管理など、認知症になる前に対策ができていなかった場合、凍結された口座のお金を引き出すことはとても難しくなりますが、方法がないわけではありません。
- 法定後見制度を利用する
- 必要書類を持って銀行へいく
法定後見制度を利用する
前述しているように、後見制度には2種類あり、認知症が発症して医師から「判断能力(意思能力)」がないと認められた場合、法定後見制度を利用することができます。
この法定後見制度は、家庭裁判所によって認定された後見人が、被後見人の財産を守るための管理を行います。
被後見人の財産管理には社会的信頼性と管理能力が必要とされるため、約7割がご家族ではなく弁護士等の士業の先生が選ばれています。
後見人が決定した後は「被後見人のための使用」の範囲内で、家庭裁判所が認めたものであれば後見人が適切に財産の管理・処分を行うことができます。
必要書類を持って銀行へ行く
認知症になる前に銀行が用意している代理人サービスなどを利用していれば、問題なく口座のお金を利用することができますが、特に何も準備していなかった場合は凍結される可能性が高くなります。
原則として認知症になった後は後見制度の利用等がない限り、本人でも代理人でも引き出しをすることができません。
ですが、最近では一部の銀行で使用用途が明確なもの(医療・介護費用等)については柔軟な対応ができる様になってきています。
これについては各銀行・支店によっても対応が異なってきますので、口座のある銀行に問い合わせてみてください。
早めの対策ともしもの時の相談を忘れずに
認知症になると想像以上に財産等の管理がややこしくなり、ご家族・ご親戚でも厳しい制限下での管理を余儀なくされます。それにより、金銭的・精神的な負担がかかり、介護に集中できない状況になってしまうことも珍しくはありません。
認知症や重度障害については早めの相談・対策が大切です。できるだけ認知症になる前に対策をしておくことが理想ですが、万が一認知症になってしまった場合でも対策方法がないかどうか専門家に相談してみましょう。
少子高齢化の進む日本では、これからも認知症に関する政策が増えてくることも考えられます。
アイビスホームでは不動産の売買はもちろんのこと、相続診断士の資格を持つ社長窪多が不動産の相続についてもご相談承ります。
認知症対策などについても始業の先生方とチームを組んでサポートしておりますので、一度お気軽にご相談ください。
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