相続登記の必要書類に期限がないって本当?早見表で簡単チェック!
相続登記にはたくさんの書類が必要になります。書類集めから手続きまでがスムーズにいけば問題はありませんが、遺族間での話し合いが長引いてしまったり、仕事の都合で時間が空いてしまう場合も少なくありません。
そんな時に気になるのが集めた書類に有効期限があるのかどうか。もし有効期限が過ぎてしまったらまた同じ書類を集めなくてはいけないのか・・・。
今回は気になる「証明書(書類)の有効期限」について、ご説明していきます。
住民票などの証明書は3ヶ月以内のものが必要ですよね?
一般的な期限の目安としては、3ヶ月や6ヶ月と区切られることがありますが、実は証明書自体には明確な有効期限は設けられていません。
ただし、提出先や証明書によっては証明書の有効性を確保するために一定の期限を設けている場合があります。
それなら注意が必要な書類や提出先を把握しておけば安心ですね!
まずは結論だけを一覧表で確認
書類(証明書)の有効期限については、その時の条件などによって一定の期限が定められることもあれば、期限なく使用できることもあります。
色々と長々と説明されても困る!という人のために、相続登記において注意が必要な書類だけをピックアップしてまとめましたので、相続登記に関する書類については下記の表をご覧ください。
相続登記に必要な書類一覧については「相続登記の必要書類を効率よく集めるためには?一覧表から取得方法までご説明」をご覧ください。
書類(証明書) | 有効期限 | その他注意点(条件など) |
---|---|---|
被相続人の戸籍謄本 | 期限なし | 出生から死亡までの戸籍謄本が必要 |
相続人の戸籍謄本 | 3ヶ月もしくは6ヶ月 | 被相続人の死亡日以後に取得していること |
印鑑証明書 | 3ヶ月 | 最新の住所が記載されていて、登録してる印鑑に変更がないこと |
住民票 | 3ヶ月 | 最新の住所が記載されていること |
固定資産評価証明書 | 期限なし | 相続税の申告は「相続発生年度」のもの 登録免許税の申告は「申請年度」のもの |
今回の記事では上記の書類について、提出先などの条件も含めて詳しくご説明しますが、上記の表の条件・期限内のものであれば、提出先などにかかわらず使用することができます。
相続登記に必要な書類の有効期限はどのように決められている?
相続登記には欠かせない住民票や印鑑証明、戸籍謄本などの証明書には、有効期限はありません。また、遺産分割を行うために作成した遺産分割証明書にも期限はないため、万が一相続登記を忘れてしまっていた場合でも、書類さえ残っていれば後から手続きを行うことも可能です。
自治体で発行される証明書の有効期限については、各自治体のHPなどにも記載されています。
高岡市公式ホームページ:住民票や印鑑登録証明書の有効期限を教えてください。
先代や先々代の相続が未登記でも、遺産分割協議書や相続人の戸籍謄本などの必要な書類が揃っている場合は、10年以上前の書類でも手続きを行える場合があります。もし未登記の相続などがある場合は手元にある書類を持って専門家に相談をしてみてください。
使用目的によっては有効期限が定められることがある
書類自体に有効期限がない場合でも、使用目的や提出先によっては期限(取得日の指定)を定めていることがあります。
例えば、現住所の確認のために住民票の提出をする場合、10年以上前に取得した住民票では信頼性に欠けてしまいます。そのため、「直近3ヶ月以内に取得したもの」というような取得日に関する期限を設けている場合があります。
不動産登記令などの法律で定められている場合もある
提出先が独自に決めている期限以外にも、法令で定められている場合もあります。
不動産登記令の第16条、17条、18条では印鑑証明等の書類について、3ヶ月以内に発行されたものでなくてはならないと明記されています。そのため、不動産登記を行う際には書類の取得日に注意をしてください。
e-gov:不動産登記令
※相続登記に関しては、不動産登記令の第16条、17条、18条には該当しないため、取得日に関係なく使用することができます。
相続登記における書類の有効期限を決める3つのポイント
書類自体に期限がないことは説明しましたが、相続登記をする際には一定の期限が定められる場合もあります。相続登記を行う際は次の3つのポイントに注意してください。
ポイント1 書類をどこに「提出」するのか
1つ目のポイントは「提出先」における期限の違いです。
相続関係の手続きは不動産だけではなく、銀行や生命保険などあらゆる機関での手続きが必要になり、民間企業への書類の提出も必要になります。
多くの場合、行政機関であれば法律で定められたもの(不動産登記令など)が無い限りは、書類の期限通りに手続きを行うことができます。民間企業の場合は、詐欺や登記内容の誤り防止のために提出書類に期間要件を設けている場合があります。
法務局・税務署などの役所
不動産の相続登記や相続税の申告などは、各行政機関(法務局・税務署等)に書類を提出する必要があります。この場合は原則として書類に有効期限はありません。
※相続人の戸籍謄本は取得日の決まり(被相続人の死亡日以後)があります。
印鑑証明書に関しては作成後3ヶ月以内と明記している法務局もありますので、できるだけ新しいものを用意してください。
名古屋法務局:ご自身で不動産登記申請を検討されている方へ
銀行・保険会社などの民間企業
被相続人が生命保険に入っていた場合や、使用していた銀行口座に関する手続きを行う場合や、各銀行や保険会社のような「民間企業」への手続きが必要になります。
特に銀行では印鑑証明書や住民票などの証明書に関して、取得日から「3ヶ月」もしくは「6ヶ月」と指定される場合が多くあります。最近では期間要件も緩和していますが、もし古い書類を利用する場合は一度問い合わせて確認をしてみてください。(戸籍謄本についても6ヶ月以内と定めている場合があります。)
機関や支店によって定めている内容が異なる場合がありますので、お問い合わせをする際は被相続人名義の口座のある支店にお問い合わせをしましょう。
各金融機関の店舗一覧(支店検索)
北陸銀行の支店検索
富山銀行の支店検索
高岡信用金庫の支店検索
北陸労働金庫の支店検索
また、金融機関によってはHPに手続きの流れや必要な証明書についても記載されていますので、お問い合わせの前に一度HPを確認してみてください。
北陸銀行 : 相続手続きについて
北陸銀行 : 相続手続きのご案内(PDF資料)
ポイント2 書類をいつ「取得」したのか
2つ目のポイントは書類の「取得日」です。
書類によって取得日の重要性は変わりますが、相続登記においては被相続人と相続人の相続関係を証明する必要があるため、「被相続人の死亡日以後」に取得した証明書を求められる場合があります。
また、相続人が被相続人より早く死亡している場合には代襲相続が認められるため、相続人の戸籍謄本は必ず「被相続人の死亡日以後」に取得しましょう
ポイント3 「申請」を行うのはいつか
3つ目のポイントは申請を行う日(年度)です。
相続手続きの中には手続き完了までの期限が設けられているものと、期限のないものがあります。具体的には相続税の申告であれば「相続発生から10ヶ月以内」ですが、相続した不動産の登記については明確な期限が設けられていません。
そのため、場合によっては相続登記(不動産の登記)を行うのが相続発生から10年後になる場合もあります。
相続で不動産登記を行う場合でも「登録免許税」を支払う必要があり、登録免許税はその年度の固定資産評価額をもとに計算されます。そのため登記の申請を行う年度の「固定資産評価証明書」が必要になります。
一方相続税は相続した時の固定資産評価額を参考にする必要があるので、「相続が発生した年度」のものが必要になります。
もし年度を跨ぐ場合には注意しましょう。(年度 = 4月1日〜翌年3月31日)
書類別にみる期限の注意点
ここまで紹介したポイントとは別の視点として、ここからは書類別に期限の注意点をみていきます。
相続登記に必要な書類は、相続の方法によっても異なります。ここでは特に期限に注意が必要な書類だけをピックアップしていますので、必要書類について知りたい方は「相続登記の必要書類を効率よく集めるためには?一覧表から取得方法までご説明」をご参考にしてください。
戸籍謄本
被相続人のもの
被相続人の戸籍謄本については、原則出生から死亡まで全て必要になるため、一度取得した後は期限なく使用できます。(死亡後に内容が変わることはないため)
相続人のもの
相続人の戸籍謄本は、主に被相続人が死亡した時に相続人が生きていたかどうか(相続件の有無)を確認するために使用されます。そのため「被相続人の死亡日以後」の日付で取得されていることが必要です。
相続人が被相続人よりも先に亡くなっている場合、「代襲相続」の対象となりますが、相続登記完了前(被相続人の死亡と相続登記手続きの間)に相続人が亡くなった場合は「二次(数次)相続」の対象となります。
それぞれの相続は、次の相続人となる対象が異なるため、必ず「被相続人死亡日以後」に取得した相続人の戸籍謄本が必要になります。
印鑑証明書
印鑑証明書は証明書の中でも特に期限に注意が必要な証明書です。多くの場合は作成後3ヶ月以内という期限が設けられています。
また、印鑑証明書には現住所の記載がされるため、3ヶ月以内に作成されたものであっても、現住所の記載がないものは使用できません。
もちろん実印として登録している印鑑の変更を行った場合は、変更前の印鑑証明書は使用できませんので、新しいものを作成して使用してください。
住民票
住民票は主に「最新の住所」の確認に使用されることが多いため、できるだけ新しいものを用意しておきましょう。多くの場合は印鑑証明書と同様に作成後3ヶ月などと定められています。
また、住所の変更があった場合には、変更前に作成された住民票は使用できなくなりますので、新しく作成して使用してください。
固定資産評価証明書
相続登記に関する手続きで固定資産評価証明書が必要になるのは、主に「相続税の申告」と「登録免許税の申告」の2つの申告手続きです。
■ 相続税の申告について
相続税の申告は、相続が発生してから10ヶ月以内に申告する必要があります。仮に遺産分割協議など、遺産についての話し合いや登記が終わっていない場合でも申告・納付を行います。
相続税は、相続が発生した年度の評価額をもとに計算されますので、固定資産評価証明書は相続が発生した年度のものを用意してください。
例:) 令和3年11月2日に相続が発生した場合、令和4年5月2日までに令和3年度の固定資産評価証明書とともに相続税の申告を行います。
■ 登録免許税の申告について
登録免許税の申告は、不動産の登記を行うときに合わせて申告をします。そのため、明確な期限がなく相続発生から数年経って登記を行うこともあります。
登録免許税は、不動産の登記を行うために必要な税金となりますので、登記申請を行う年度の評価額を元に計算されます。固定資産評価証明書は登記申請を行う年度のもの(最新のもの)を用意してください。
例:) 令和3年11月2日に相続が発生し、令和4年5月2日に登記申請をする場合、令和4年度の固定資産評価証明書とともに登録免許税の申告を行います。
面倒な手続きをスムーズに行うためには
書類集めだけでも面倒な相続手続き。書類に期限や不備などで再申請が必要にならないように、集めた書類の保管方法や申請のコツなどを確認しておきましょう。
必要な期限・取得日の要件を把握しておく(できるだけ最新のものを用意する)
提出先などによって期限が設けられる可能性のある書類については、あらかじめ期限や取得日の要件を把握しておきましょう。期限がわからない場合は作成から3ヶ月以内を目安に用意しておきましょう。
特に期限が設けられやすい「住民票」や「印鑑証明書」などは、コンビニ印刷で作成できる自治体もあります。
コンビニ交付:証明書の取得方法
銀行などの期限を設けている機関の手続きを先に行う
相続に関わる全ての手続きを3ヶ月以内に終わらせることができれば、書類の期限などについてもあまり考える必要はありません。
ですが、実際には仕事の都合などもあり、手続きには時間がかかる事がほとんどです。
できることなら、司法書士などの専門家に依頼して手続きを代行してもらうことが理想ですが、もし自分で手続きを行う場合は手続きの優先順位をつけることでスムーズな手続きが可能になります。
例えば、銀行での手続きの場合は3ヶ月以内と定められていることが多いので、銀行の手続きを優先してみるのもいいでしょう。
相続に必要な手続きは人それぞれ異なりますので、ご自身に必要な手続きと必要書類、期限などを洗い出して優先順位をつけて行ってみてください。
各書類は日差しの当たらないところで保管をする
証明書などは直接日差しの当たるところに保管しておくと、日焼けによって文字が薄くなってしまうことがあります。多少の日焼けであれば問題ないこともありますが、ひどい場合は証明書として効果がなくなってしまう場合があります。
自治体などで書類を作成してもらった時に、窓口にある封筒に入れて保管するなど、日焼けや汚れの防止をして保管するようにしましょう。
また、証明書には個人情報が記載されているので、金庫など一目につかない場所に保管し、不要になった書類は正しく処分するようにしてください。
住民票などの書類には個人情報が記載されています。手続きが終わって不要になった書類や、再取得して不要になった書類などを処分するときは注意しましょう。ペンやスタンプで消すだけではなく、復元できないようにシュレッターなどで裁断をしてください。
法定相続情報証明制度を利用する
法定相続情報証明制度を利用することで、たくさんある戸籍謄本の束をまとめ、手続きに必要な書類の量を減らすことができます。
また、戸籍謄本の期限を作成日から6ヶ月以内と定めている機関でも、法定相続情報一覧図であれば申請を行うことができます。
一度一覧図を登録しておけば、5年間は無料で一覧図を再交付してもらえる便利な制度ですので、相続の手続きが多い方は是非利用を検討してみてください。
法定相続情報証明制度を利用するメリット
- 戸籍謄本の期限を気にしなくて済む
- 戸籍の束を数枚(1,2枚)にまとめることができる
- 5年以内なら法務局で再発行(無料)することができる
法定相続情報証明制度については、「法定相続情報証明制度とは?利用方法とメリット・デメリットについて」をご参考にしてください。
相続登記でお困りの方はお気軽にご相談ください
相続の手続きは人生でそう何度も経験するものではありません。そのため、どのように手続きをしたらいいのか、どんな書類を集めたらいいのか、誰に相談したらいいのかお困りになる方も多くいらっしゃいます。
アイビスホームでは相続診断士の資格も取得していますので、不動産だけではなく相続問題全般についてアドバイスをすることができます。
相続関係でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談に来てください。
お気軽に『窪多』まで