自分の老後、両親・家族の老後を考えるとき、老人ホームへの入居が選択肢のひとつに入る人も少なくありません。

しかし、実際に入居をするときには、入居費用などの金銭的な負担はもちろんのこと、不動産などの財産管理などについての手続きの負担もとても大きく、躊躇してしまう人も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、老人ホームへ入居する際の不動産の管理について、ご紹介していきます。

老人ホームの入居だけではなく、認知症対策にも役に立つ内容になっていますので、ご自身・ご家族の老後を考えるときには是非ご参考にしてください。

不動産などの「財産」は自分の意思でしか売却できません

本題に入る前に、不動産売却の前提をお話させてください。

不動産などの「財産」というものは、原則ご自身の意思がなければ、売却譲渡をすることができません。これは不動産に限らず銀行に預けた現金についても同様で、ご家族であっても勝手に使うことができないということです。

また、認知症など「意思表示」の確認が難しい状況になってしまうと、ご家族だけではなく所有者本人の意思でも売却や譲渡が難しくなることもあります。

認知症などの介護も含めた入居の場合では、認知症の進行度によって必要な手続きが異なるため、できるだけ早く専門家に相談するようにしてください。

老人ホームに入居するときに「売却」を検討したほうがいい4つの理由

老人ホームに入居した後、子供や他の家族などが継続して住む場合であれば維持や管理については問題ありませんが、空き家になってしまう場合は管理を依頼する必要がありますよね。

維持・管理以外にも、売却したほうが良いとされるメリットを4つご紹介します。

メリット①自分の意思で売れる間に現金化しておく

記事の最初にも触れましたが、認知症など「意思確認」が難しい状態になると、本人の意思でも不動産を売却することができなくなります。

老人ホームへの入居を検討される方の多くは、健康面や介護面での家族への負担を考えたり、緊急時の対応を必要とされる方が多いと思います。今は元気で自分の意思がある場合でも、入居後に自分の意思では売却できなくなってしまう可能性もあり、対策が必要です。

成年後見制度などを利用することで、認知症になった後でも売却することはできますが、ご家族の負担を考えると、先に現金化をしておいた方が負担を減らすことができます。

メリット②老人ホームの入居費用に充てる

公的施設か民間施設かによっても、入居費用は大きく変わり、中には入居費用(入居一時金)がかからない老人ホームもありますが、月々の費用は必ず必要になります。

LIFULL介護(https://kaigo.homes.co.jp/)のデータを見ると、有料老人ホームの入居一時金の中央値は約500万円、月額費用は20万円です。

老後のために貯蓄をしていたとしても、5年入居していれば1,000万円以上の費用が必要になります。少しでも安心して暮らすためにも、不動産などの現金化を検討しておきましょう。

メリット③家の維持費が必要なくなる

老人ホームへの入居後に、誰も住む人がいなくなってしまう場合、不動産の維持管理を家族に依頼するか業者への依頼が必要がです。一時的な入院や入居などの場合であれば、費用もそこまでかかりませんが、長期的な管理を依頼するとなるとご家族への負担や費用も大きな金額になります。

また、住んでいない土地や建物でも毎年の固定資産税・光熱費等の固定費がかかるため、管理費なども含めると年間で20万円以上の費用がかかることも・・・。

メリット④税金面での優遇を受けることができる

通常、不動産を売却した際の利益(売却益)には税金がかかりますが、マイホームの売却益であれば3,000万円まで控除を受けることができる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という制度があります。

この制度を利用できるのはあくまでも居住用財産だけで、老人ホームへの入居後3年以内に売却しないと制度の対象外になるため、入居時に売却を検討しておくことが大切です。

相続による売却でも3,000万円控除がある

相続によって取得した不動産(土地・建物)を売却する場合でも、3,000万円までの特別控除があり、これを「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」と言います。

この特例は、10個の条件があり、全ての条件に当てはまった場合のみ控除を受けることがでるのですが、その一つに「被相続人が直前まで住んでいたこと」という条件があります。

つまり、老人ホームに入居して空き家になっていた不動産は、この特例を受けることができません。そのため、老人ホーム入居後3年以内に売却し「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を受けていないと、売却益にかかる税金の負担がかなり大きくなってしまいます。

両親名義の不動産を売却するために必要なこと

両親名義の不動産を売却する場合、もしくは自分の所有する不動産を子供に売却してもらう場合、名義人の健康状態によって二つの方法があります。

委任状を用意する

認知症などではなく、名義人本人の意思確認ができる状態であれば、委任状を用意することで子供などの親族の方が代理として不動産を売却することができます。

意思確認はできるが、体力的な心配がある方などは、不動産との打ち合わせなどを信頼できる家族に代理でしてもらうのも一つの方法ですね。

また、すでに老人ホームに入居されていて、介護が必要なため自由な外出が難しい方でも利用できる方法です。

成年後見制度を使う

すでに認知症がある程度進行してしまい、医師から「意思能力が欠ける状態」と診断されている場合には、名義人本人はもちろんのこと、委任状があってもご家族で売却をすることができません。

このような場合は家庭裁判所に申請をし「成年後見人」を選定してもらうことで、選定された後見人が代わりに売却の手続きを行うことができるようになります。

ただし、成年後見人は名義人の不利益になる財産の管理はできませんので、場合によっては売却ができない場合もあります。また、一度任命された後見人は、不動産以外の財産管理も行う必要があり、本人がなくなるか意思能力が回復するまで管理を行います。

成年後見人は弁護士などが選ばれることもあるため、その場合は報酬の支払いが必要になります。あらかじめ信頼できる家族に後見人を依頼したいときは、認知症などになる前に「任意成年後見制度」を利用しておきましょう。

老人ホームに入居する際の不動産売却の流れ

実際に老人ホームの入居と同時に不動産を売却するためには、入居先を探すのと同時かそれより前に不動産屋さんを探しておくことが大切です。

ここでは実際の売却の流れを、一例としてご紹介いたします。

①信頼できる不動産屋さんと老人ホームを見つける

不動産の売却金額や時間は、不動産の状態や地域の需要などによっても大きく変わるため、どれくらいの金額でどれくらいの売却期間になるのかは、不動産屋さんに相談しないと検討もつかないことがほとんどです。

売却金額や時間によって、入居先の老人ホームの選択肢が変わることもありますので、できるだけ先に不動産屋さんい相談するようにしましょう。

また、入居される方の健康状態やご家族との関係性などによっても、ご本人が売却手続きをするのか、委任状や後見人が必要になるかも変わります。

②売却方法を決定する

売却方法は「仲介」「買取」のほかに、弊社アイビスホームでは「アイビス式買取」をご用意しています。

仲介よりも早く、買取よりも高く売却することを目的にした買取方式で、ご来店のお客様限定でご案内しておりますので、ご興味のある方は是非ご来店ください。

また、ご本人以外の方による手続きが必要な場合などでは、通常の不動産売却よりも時間がかかる場合もございます。誰が手続きを進めるのかなどについても、ご相談しながら決定していきます。

③売却活動

「買取」もしくは「アイビス式買取」をご選択のお客様の場合、売却活動はなくすぐに現金化となりますが、「仲介」による売却の場合は平均半年程度の売却期間が必要になります。

実際に売却活動をしてみないと、正確な売却期間はわかりませんが、物件の状態や地域などから大まかな売却期間については、ご契約前にご説明をさせていただきます。

④税金の申告

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を受けるためには、売却した翌年2月16日から3月15日までに確定申告をする必要があります。

ご本人様はすでに老人ホームにご入居されているので、ご家族が代わりに確定申告を行うことが多くなります。

⑤相続の事前準備

最近では「終活」という言葉も一般的になりつつありますが、子供に余計な苦労をかけないためにも、自分の財産についてしっかりと相続の準備をしておくことが大切です。

終活を始めるタイミングは人それぞれですが、老人ホームへの入居などをひとつのタイミングとして、ご自身の財産整理をするのも良いかもしれません。

血のつながりのある親子でも、なかなか相続などの話し合いはしにくい話題ですので、大きな節目にきちんと家族でお話をしてみてください。

アイビスホームでは不動産の売却はもちろんのこと、社長の窪多が相続診断士の資格も持っておりますので、不動産以外の相続についてもお気軽にご相談いただけます。

不動産・相続に関するご相談はお気軽に

今回の記事では老人ホームへ入居する際の、不動産の売却についてご説明させていただきました。

老人ホームに入居するときは、必ずしも不動産を売却しなくてはいけない。ということではありませんが、空き家になってしまう場合や、いつかは売却するのであれば、3,000万円控除を受けられる間に売却を済ませる方が賢い売却と言えるかもしれません。

実際に売却した方がいいのかどうかについては、不動産屋さん、税理士だけではなく、ご家族とも相談して決めるようにしましょう。